概要:
本作品は “Tree Story Forest Project”の一部分にあたるものである。展示スペースに設置されたハンドメイドのアンプ、スピーカー、プレイヤーからなる一つの再生システムがひとつの物語を話す声を再生する。そのシステムを複数設置することによって聴感上の「層」を作り出し、空間内の声の響きは複雑に絡み合う。また、ループ再生される物語の長さがそれぞれ違うため、聞こえてくる声の組み合わせは常に異なったものとなる。それによって個々の物語が互いに影響しあって生まれるイメージも常に形を変えて鑑賞者の前に現れる。
コンセプト:
「森」を構成するための「木」のストーリーは作家Stephen Aushermanによって作成される。それぞれのストーリーは、一本の樹について語られており、またそれぞれのストーリーはどこかでつながりを持つものとなるため、個々のストーリーは全体で大きなひとつの物語を構築する。作成されたストーリーを菅野が選んだ読み手により朗読され、それを録音する。物語は現状ではもっともグローバルな言語である英語で朗読され、読み手は可能な限り幅広い地域や年代から集めた。このプロジェクトには明確な制作期限を決めておらず、物語(=木)は徐々に蓄積されてゆくこととなる。作品はある時点で何度か発表される。このプロジェクトはアートという手法をもって行われる「植林」活動であり、これまで24カ国からの62人による物語の朗読を録音した。この働きかけを継続してゆくことによって巨大な「森」へと発展してゆく。